「綺麗だな……これは、セイちゃんのお父さんが撮ったの?」

「うん。お母さんが言うには、発売されたばっかりの良いカメラを買ってね、初心者なりに頑張って撮ったらしいよ」

「へえ……すごいなあ。すっごく鮮明に撮れてるもんね」

「ね。下手な初心者でもこんなにうまく撮れるくらいいいカメラだったのに、今は全然使ってないんだもん。まだ残ってたら、わたし貰っちゃおうかな」

「それいいね。一緒に写真撮ろうよ」

「そうだね。そしたらわたしを隠し撮りするハナに復讐できるし」

「隠し撮りなんてしたことないよ」

「わたしはされたこと何度もあるよ」


えー、と文句を言いたそうなハナを無視して、わたしはまた1枚ページをめくった。

そこで「あ」とふたり揃って声を上げる。


次の写真に写っていたのは、星空ではなかった。

花に囲まれた、小さな頃のわたし。


「……お花畑だ」


膝丈くらいの高さの花が、暗闇に紛れる遠くまで敷き詰められているのがわかった。

とても鮮やかな景色だった。

昼間のように明るくはないのに、夜空とは対照的な鮮烈な色を、そこに見ることができる。

淡いのに、でも心に焼きつくような色。


「コスモス畑か。素敵だね」

「ね、こんなに広く咲いてるのは見たことないなあ」


小さな愛らしい花。

薄紫や、ピンク、白色のそれの絨毯の上で、子どものわたしはカメラも見ずに、ひとり星を見上げていた。


「セイちゃん、見事に空に夢中だねえ」

「この写真を見た今になっても、お花畑のこと思い出せないくらいだからね」

「あは、かわいいなあ」


あ、また、そういうことを平気で。

とこっそり顔を赤くしたのを、ハナは気付いていないだろう。