「準備ができ次第で、お母さんが出て行くんだ。わたしはまだ、どっちに付くか決めてないけど」


昨日、家族で話し合ったことだった。

バラバラになるわけじゃなく、これからもたったひとつの家族であるために、これからは、離れて暮らすこと。


「お母さんと行くなら、一緒に引っ越すことになる?」

「うん。でもたぶん、お父さんに付くと思う。まだ高校入ったばっかりだし、経済的なところを考えるとね。あとうちのお父さんなんにも家事できないから、ひとりにすると死にそうだし」

「だけどお母さんは寂しいんじゃない?」

「たぶんね。ふたりともが『お前が好きな方を選べ。でもできればこっちに来い』って感じだったから。だけどお母さんにも会えなくなるわけじゃないし。そんなに遠くには行かないから、いつでも会えるよ」


引っ越し先はまだこれから決めるけど、わたしが今の家と新しい家とを簡単に行き来できるくらいの距離にするって言っていた。

どちらに付いても、どちらもに気軽に会いに行けるように。


「だから、今までと形は少し変わっちゃうけど、寂しくはない」


望んでいたような元通りには、やっぱり戻ることはなかった。

それでも時間が経てば人の心は変わる。

今のわたしたちには、これが一番最適な家族の形なんだと思う。



「そうだハナ。見せたいものがあるんだ」

「ん、何?」

「写真。わたしのね、小さい頃の写真なんだけど」

「セイちゃんの小さい頃? それすごく見たい」

「違うよ、見せたいのはわたしのことじゃなくて」


苦笑いしながら、カバンの中からアルバムを取り出す。

昨日の夜にお母さんに出してもらった、10年も前の古いアルバムだ。