「なに……言ってんの」


バッと目を逸らした。見ていられなかった。

だって馬鹿みたい、何を言ってるの、そんなこと。

……そんなこと。


「言ってたじゃん、ハナも。同じものを見てはいたけど、違う気持ちで見てたみたいだって。それ当たってるよ。ハナは綺麗だと思って空を見てたけど、わたしはそんなこと考えてなかった」

「うん」

「わたしは何にも考えたくないときに空を見るんだよ。いろんな嫌なことを全部、忘れたいときに」


ハナみたいに、そういう、綺麗な思いで、わたしは空を見てなんかいなかった。

忘れたい、失くしたい。

なのにいつでもぐるぐると駆け巡っている。

頭の中で。胸の奥で。そんなものばかりが。

すごく汚い、嫌な思い。


「うん……そっか」


降ってくる声、それから、俯いた視界に見えた姿。

わたしを見下ろしていたハナは、目線を合わせるみたいにして、今はわたしを見上げている。


「なるほど。セイちゃんは大変なのか。困ったね」


しゃがんで、顎に手をついて、眉を寄せて、なんだか少し渋い表情で。

首を傾げて「うーん」と、本当に困っている顔をして。