話したいことはなかなかまとまらなくて、途切れ途切れなわたしの言葉は伝わり辛かっただろうと思う。
自分でも何を話してるのかよくわからなくなったり、口に出しながら「ああ、わたしこんなこと思ってたんだ」って、考えたりなんかもした。
リビングはまだぐちゃぐちゃなまんまだ。
料理は散らばってるしお皿は割れてるしテーブルは歪んで置かれている。
さっきそれを見たときは、こんな場所知らないって思った。自分の家じゃないって。
それなのにまだおんなじ状況の今は、やっぱりここが一番、自分の家だなあって感じる。
悲惨な状況。だけどそんなのおかまいなしに、わたしたちは斜めのテーブルの定位置に座って互いを見ていた。
わたしの目の前にお父さん。斜め横にお母さん。
四角のテーブルにコの字型。わたしが憶えてる一番古い記憶のときよりももっと前から、変わらない家族の定番の位置。
久しぶりに、ちゃんとふたりを見た。
お父さんはいつのまにか目尻に皺が増えたし、お母さんは白髪が多くなった。
だけどわたしを見てくれる瞳は変わらなかった。
小さな、きちんと愛されているんだと、確かに思っていた小さなときに、向けられていたそれから。
『きっと、お父さんとお母さんの気持ち、知らないはずだ』
変わっていなかったのかな、ずっと。
それをただわたしが、変わってしまったんだと思い込んでいただけなのかな。
それとも今、元に戻っただけだろうか。
……そんなことすら答えを出せない。
きっとそれくらい、わたしも、お父さんとお母さんを見つめられていなかったんだ。
自分のことはもうふたりの心に無いって思いながら。
遠ざけていたのは、わたしも同じだった。