「三浦さん、もしかしてお家この辺り?」

「うん、そうだよ。すっごく近所。倉沢さん家は確か……南町の方だよねえ。なんで」


なんでここに、と言おうと思ったんだろう。

でも三浦さんはそこでふいに「あ」と声を上げた。


「そういえば、倉沢さん大丈夫なの?」


唐突な問い掛けに首を傾げると「学校、休んでたから」と返ってきたので、ようやく学校をさぼったことを思い出した。

仮病すら使わずさぼる生徒は何人かいるけれど、普段そういうことをしないわたしが突然休んだのには、驚かれただろうと思う。


「うん、まあ……大丈夫。ありがと」

「そうだろうね。その感じだと風邪っていうか、さぼりっぽいし」

「う……うん。すいません」

「あはは、やっぱり。倉沢さんって真面目そうなのにさ、原付の免許取ったりだとか、なんかこっそり外れたことしちゃうよね」


三浦さんは非難するふうじゃなく、なぜだかとても愉快そうに笑っていた。

笑っていいことでもないと思うけど、とりあえずわたしも、あんまりうまくない笑顔を返しておいた。


「セイちゃんのお友達?」


そのとき、また背中から声が。今度は、ハナの声だ。

ひょこりと覗くハナに、そうだよ、と返事をしようとして、でも、重要なことにそこで気付いた。


「…………」


見れば、三浦さんの表情が案の定というか、なんというか……変わっている。

笑顔なのは同じで、それが楽しげなのも同じで、だけど、どこか、意地悪げな感じがして。


そう、三浦さんはハナのことを知っている。

おまけに、たぶん、わたしとハナの関係を、変な風に勘違いしていた……はず。