お互いが、お互いを好きなんじゃないか。
30ともう少し、生きてきた俺は、結婚するまでにそれなりにいろんな恋愛を経験している。
人の気持ちにも、それなりに敏感なほうであって。
少なくとも、藤野ちゃんは伊藤ちゃんのことが好きだと思う。
伊藤ちゃんと同じ時間のシフトに入ると、いつもの倍のやる気が感じられる。
営業スマイルが半端ないのだよ。
だから俺は、はっきりと聞いてみた。
「藤野ちゃん。藤野ちゃんってさ、伊藤ちゃんのこと好き?」
バイトが終わった藤野ちゃんを、飴という名の餌を与えてつかまえた。
「えっ!? 何ですか、いきなり!」
んー、素晴らしくわかりやすい反応をありがとう、藤野ちゃん。
真っ赤な顔で「人として、同じ店で働く人としては好きですけど!」と、必死で答える藤野ちゃんを見て、俺は確信した。