「ルールはそれで終わりなわけね。じゃ、さっさと行こうよ。私だって、地縛霊にはなりたくないしさ」

「いや、俺はここで待ってる」
クロはエレベーター前にあるベンチを指さした。
「お前が目覚めたことを上に報告しなきゃならん」

「へ?」

「俺ら案内人は雇われの身だからな。報告はしっかりやらなきゃボーナスに響く」

「クロはサラリーマンなのかぁ」
なんだか納得。さしずめ黒いスーツが制服ってとこか。

「ボーナスって言っても、人間界でいうお金じゃないぞ。もっといいものだ」
胸を張っていばっているが、特に興味のない私は、
「ふーん、そうなんだ」
と適当に合わせておいた。

「まぁ、なんだ。とにかく行って来い。蛍、お前の行動が正しかった場合、お前のからだは光ってその相手にだけ姿が見えるようになる。だからなるべくふたりっきりになれる状況を作ることだ。相手は確実に驚くだろうから、周りの人が心配しだすだろうしな」