声は宙にのぼり風になる。

 みんなの姿が消えてゆくように見えたが、そうじゃない。消えてゆくのは私だった。

 どんどん姿も風景も消えてゆく。

「またね!」

 声の限りをつかって叫ぶと、目の前が真っ白い風景に変わった。

 白い世界にひとりぼっち。

 みんなの姿はもう見えなかった。

 ふいに身体が持ち上げられ、宙に浮かんだ感覚。

 白い世界の中では、上も下も分からない。

___記憶が消される

 そう、クロが言っていた。

 この数週間の出来事は、次に目が覚めた時には消えるってことか・・・。

___忘れたくない

 心に強く思うが、思うそばから破片が崩れ落ちてゆくようだ。