「覚えてるか?俺たちの初めての会話」

「え?知らないよ」
本当に覚えていなかった。

「そうだと思った」
片目を開けて、得意気に見てくる。

「教えて教えて」

「蛍は最初にこう言ったんだぜ。『大高蓮っておもしろい名前だね』って」

「えー」

___そうだったっけ?

 実際覚えていなかったけれど、蓮がそれを覚えていてくれただけでも自然に顔がほころんでしまう。

 片思いは、果てしなくはかなく、悲しくて深い。

 それでも、相手のちょっとしたひと言で一喜一憂してしまう。

 積み重ねられたうれしい記憶があるから、好きな気持ちは深くなってゆくのだ。