「楽しかったな、いろいろ」
目を閉じて微笑みながら蓮が言う。

 過去形なのが胸に痛い。

 それを振り払うように、
「ほんとだね」
と、同意した。

 高校生活の思い出。

 輝けるその記憶のすべての景色に、蓮がいた。

「ほんとだね」
もう1度、そう口にした。

 自然に声が震える。

 もう2度と戻らない、戻せない。

「蛍とはいつも一緒にいたからな」
気づいていないのか、蓮は楽しげな口調でそう言った。

___落ち着け、私

 自分にそう言い聞かせる。