トラックを抜けて、ふたつの光は校舎沿いを歩く。

 今の私の姿は周りからは見えないけれど、ふと心配になって口を開いた。

「誰かに見られちゃうかもよ」

 蓮は何でもないような口調で、
「かまわないさ」
と言った。

「そっか」
言われるとそんな気もしてくる。

 校舎の裏手にさしかかると、裏山から来る風に髪が踊った。蝉の声もいろんな方向から合唱さながら響いている。

 壁にもたれて蓮は空に視線を移す。
「ここ、気持ちいいんだよな。ひんやりしてて」

「そうなんだ」
同じようにしてみると、裏山越しの青空が見えた。緑が鮮やかに夏を彩っている。