「案内人は、『最後の未練を解消しろ』ってそう言うの。それが終われば安らかに眠れる、って。もちろん、私はそれを望んだ。でも・・・」

「でも?」

 恭子は私を見つめた。
「案内人の言う最後の未練・・・それは『彼を殺す』だった。それが最後に私が思い描いたことなんだと」

「案内人が未練の内容まで言うの?」

「自殺だとそうなんだって」

___へぇ。いろんなルールがあるんだな。

「でもそれって当然。そいつは殺しても殺しきれないくらいのひどいことしたんだから」

「うん・・・。そう思った。私も、彼が許せなかった。でもね」
立ち上がると、手すりに両肘を乗せて空を仰ぐ。私も立ち上がって、恭子に並ぶ。さっきよりも距離が近づいたが気にならなかった。

「未練を解消するために、深夜に彼の家に忍び込んだの。彼は真夏だというのに布団にくるまって寝ていた。案内人の言うとおり、私の身体は光りだした」