恭子は驚いたように目をパチクリと開いたが、
「ありがとう」
と小さな声で言ってから話を続けた。

「私は誰にも言えずに、遠く離れた街にある産婦人科で・・・」

 苦渋に満ちた横顔。恭子がそうするのに合わせて知らずに私も唇をかみしめていた。

「・・・命がどうとか、そういうの考える余裕もなかった。今思えば、本当に残酷なんだけど、そのときの私にはそれしか道がなかった」

「うん・・・」

 他人の気持ちなんて分からない。彼女が決断したことが事実なのだから、私には何も言えない。

「手術してからしばらく熱が続いて、学校に行けなかった。親には風邪だとごまかして、ずっと家で寝ていたの。自分のしたことを考えると、涙ばかり流れて悲しかった」