恭子は笑顔のまま、しばらく顔を上げて空を見ていた。

「今日はいい天気ね」
おだやかな顔をこちらに向ける。「私が自殺したのも、こんな夏の日だった。夏休みだから、誰もいなくってね」

 セミの声が一瞬聞こえなくなる。

___自殺

 その言葉が繰り返し頭に響いた。

「ここから飛び降りたの?」


 恭子は静かにうなずく。
「今からもう、20年くらい前の話。だから、蛍さんが知らなくて当然。当時は大騒ぎだったんだけどね」

 私が何も言えずにいると、恭子は私の胸のあたりを指差した。
「ほら、制服も似ているようで違うでしょう?」

 言われて気づく。色合いなどは似ているが、恭子のそれはもう少し地味なデザインに思える。