まぶしい光の中、屋上の端からは陸上のトラックが見下ろせた。

 まだ日が昇りきっていない時間なので、陸上部の部員も数人が練習しているようだ。

「・・・いた」

 どんなに遠くても、小さくしか見えなくてもすぐに分かる。

 蓮はグランドのすみで、柔軟体操をしているようだった。

 誰とも話さず、足を広げて座り身体を伸ばしているようだ。

「蓮」
つぶやいてみるが、当然聞こえるはずもない。

「蓮、私が好きだと言ったら困るよね?」

 きっと彼は陸上以外のことでわずらわしさは感じたくないだろう。それくらい陸上が好きなのは誰よりも私が知っているから。