若夫婦は幸せいっぱいに寄り添ってニコニコと説明を受けている。

 その笑顔は、生きている証。

 もう2度と私にはできない。

「ねぇ、本当にその男でいいの?」
なんだか悔しい気持ちになって、聞こえないことをいいことに女の方に話しかけてみる。

「ここ良さそうじゃない?」
当然聞こえてない女は、しがみつくような姿勢のまま男の方を見て笑った。

「いいね、ここ」

「そうでしょうそうでしょう」
営業マンの笑顔は生理的に苦手な部類の顔だ。今にも手もみしそうなほど相好を崩している。