「それで家でずっと?」
泣いているの?と言いたそうな顔だった。

 麻紀子が顔を上げた。その目に涙があふれている。
「私、私が・・・悪いんです。あの日、私が・・・私がっ」
そう言うと、麻紀子は両手で顔を覆って泣き出した。

___麻紀子が涼太の死に関わっている?

「カクガリ」
前にいる涼太に聞こえないように尋ねる。
「涼太君ってトラックにひかれたのよね?」

「はい。でもおかしいな。先生には関係ないっすよ。日本人の暦っていうんですか、それで言うところの祝日ですもん、死んだのは」

「そう・・・」

 麻紀子の肩を抱くように、母親は身体を寄せた。
「違う、それは違う。きっと、そう思ってくれていると思って来たんです。あの子、先生のことが大好きだから、だから・・・道の向こうに先生がいるのを見て、うれしくって飛び出しちゃった。だから、先生が悪いわけではないの」