麻紀子がドアを開けると、まぶしい外の光が暗い部屋に押し寄せてきた。

「あ・・・村松さん・・・」
目をほそめながら麻紀子がつぶやくように言うと、涼太の母親がおじぎをして玄関に入ってきた。

 突然の母親の来訪に涼太が、
「お母さん、どうしたのお母さん?」
と声をあげるが、当然ながら彼女からは見えていない。

 涼太の母親は初めて見たが、まだ若く30代前半くらいの細い女性だった。紺色のスーツに身を包んで、静かに頭を下げた。

 扉が閉まると再び暗闇が訪れる。麻紀子が気づき、慌てて玄関の電気をつけると、
「あ、すみません。どうぞお上がりください」
とスリッパ出そうとした。

「先生、大丈夫。ここで大丈夫です」