「カクガリ、なんとかして先生に涼太君の姿見せてあげられないの?」

「ううん・・・」
困った顔をして頭をかく。
「ムリっすね。未練解消の相手じゃないとどうしようもないっす」

「そんな・・・かわいそうだよ」

 大好きな先生が泣いている姿をこれ以上見せるのもかわいそうな気がした。未練解消の相手ではないのなら、この場から退散したほうがいいのでは・・・。

 その時だった。玄関のインターホンが鳴り響いた。ゆるゆると、麻紀子が視線を上げる。しばらくぼんやりと玄関を見ていたが、出る気力がないらしくそのままうつむく。

「先生、すみません」
声がドアの向こうからした。その声に麻紀子と涼太がハッと顔を上げた。

「突然すみません、涼太の母です」

 今度は私とカクガリが顔を見合わせる番だった。

「は、はい!」
麻紀子がはじかれたかのように立ち上がると、慌てて玄関に走り寄る。

「お母さん!」
涼太も同じように走り出した。