「ああ、たのむよ」
テレビから目を離して父が答える。

「あら、そのテレビおもしろいの?」

「いや、最近のテレビはよく分からん」
と苦笑いする。

 母も、
「そうね」
と、笑う。

「タオルしまっておいてくれる?」
やかんでお湯をわかしながら母が言うと、
「おう」
と軽快に答えて父はタオルを持ってリビングから出て行く。

「・・・そっか」

___ここには、もう・・・私のいない時間が流れている


 いつまでも悲しんでほしいわけではない。両親が悲しむ姿なんて見たくないに決まっている。

 それでも、何もなかったように日常を送る姿を見たことが、少なからずのショックを私に与えていた。