自宅に着くと、ドアをすり抜け中に入る。だいぶんコツがつかめてきたが、すり抜ける際の感覚だけは好きになれない。

「お母さん?」
声をかけてリビングに進む。ちょっと帰ってないだけなのになつかしく感じるとともに、慣れ親しんだ場所だからか安心感がある。

 母はフローリングの床に座って洗濯物をたたんでいるところだった。

 ソファでは父がテレビを見ている。

「そっか、今日は日曜日かぁ」

 すっかり曜日感覚がなくなってる。

 母は前に見たときよりも血色が良く、生きていた当時とそう変わらないように見えた。

 洗濯物をたたみ終わると母は立ち上がり、
「コーヒー飲む?」
と父に声をかけた。