「一度さ、家に帰りたいよ」
なぜか無性に両親の顔が見たくなった。

「やめとけ」
その言い方には有無を言わさない空気が含まれてるようだった。

「なんで?もうずっと家に帰ってないんだよ。お母さんの顔くらい見たっていいじゃん」

「だめだ。これ以上不安定になられると困る」

「こんな状況の方がよっぽど不安定だよ!」

「ピーピーうるさい。学校へ行くぞ」

 さっさとクロは歩き出してしまった。少し行ったところで立ち止まると腕を組む。早く来い、とでも言うように怖い目で見てくる。

「・・・ケチ」
聞こえないように言うと、私も歩き出す。それを確認するとクロは再び背中を向けて歩き出した。