マリナさんの綺麗な目が、さらに大きくなる。
きっと、私が恋愛の話をすることが珍しくて驚いたんだろう。
それでもスプーンを持つ手を止めて、その目が宙をさまよった。
「…そうねぇ」
少し考えてから「私ね」と、揺れ動いていた瞳をこっちに向けてくる。
そこに宿るのは、なんの偽りも躊躇いもない、まっすぐさだった。
「追うことが好きなの。何かを手に入れたくて、追い求めるために努力をするのが好き。
…不思議とね、手に入るとまた次が欲しくなるの。ダメだってわかってるんだけど」
極度の恋愛体質。
それはわかってる。
呟くようにそう付け足すマリナさんに、思わず「じゃあ蒼ちゃんは?」と聞いていた。
マリナさんが私をまっすぐと見つめた。
そして、少しだけ視線を逸らす。
「…蒼ちゃんは」
マリナさんは再び手を動かして、チャーハンの残りの粒をスプーンで集めた。
「弟みたいなものよ。言ったでしょ。向こうもこんな34歳なんて相手にしてないって」
「でも蒼ちゃんは本気だったよ!」
私は机に身を乗り出していた。
強く、マリナさんを見据えて、震える唇を噛み締めた。