次の休み時間も、美奈子はさっと有紗の席に歩み寄って、こちらにはまったく目を向けない。

もう確信していた。


――無視されてる。わざと、気づかないふりをして避けられている。
どうしてなのかはわからないけど。

でも、一つだけ心当たりがあった。




中川先輩。





裏門でなのか、歩いてる道でなのか、カフェでなのかはわからないけれど。

昨日のことを美奈子が目撃していたのなら。
あるいは誰かから聞いたのなら。

それに反感を買っているというのは、あり得る話だった。




――やっぱり、美奈子は中川先輩が好きなんだ。
だから、いい気持ちではないんだ。

そうなると、私も美奈子に申し訳ないことをしたような気持ちになる。
別に「中川先輩が好きだ」とも「だから好きになるな」とも言われてないけど。



…こういうところが、先輩にも言われた、
「人一倍気を使う」という性格の表れ。



美奈子に話しかけることができない。

私は、携帯を取り出して、メールを打ち始めた。



…これしか、手段が思いつかなかった。