そんな話を、とつとつと語る蒼ちゃんは、やっぱり育ちのいいワンちゃんみたいだった。
いい家庭で育てられたんだろうなぁ。
最初にそう思った、私のカンは正しかったようだ。
「兄貴はとても優秀で聞き分けが良くて、俺は別にいらない気がしてたんだよね。なんか、付属品みたいなもので」
蒼ちゃんは、私の淹れた熱いお茶を飲みながら、そう言った。
こんなにも柔らかな物腰で、輝いた雰囲気を持って、友達が多くて。
そんな人でさえ、自分を「付属品」だと思うなんて。
先輩の言葉を思い出した。
――そこの家庭も、多かれ少なかれ、何かしら問題を抱えている。
ああ、その通りだなぁと心から思った。
蒼ちゃんは、「もうちょっとだけ頭を整理したい」と言って、マリナさんの部屋で寝てしまった。
結局帰るのか帰らないのかわからない。
…大事なご子息が34歳の子持ちの女のマンションに居候し、かつその娘と同居して「犬」扱いされていることを知ったら、
蒼ちゃんのお父さんは失神するだろう。