基本的には、いつも自分でやっていたんだけど。

そう言いながら、ユッキーはタオルで俺の髪をゴシゴシとし始めた。


「なんだか、気持ちが落ち着くでしょ」


…本当に。
いつもは、人に髪を触られるのは嫌だと思ってたけど。

悪くない。
というか本当に、自分でも不思議なくらい気持ちが落ち着いてきた。






「…ユッキーは、俺より大人だな」


一瞬前の行いを心から恥じて。
そして彼女の冷静さと寛容さに感服して。

ぼそっとそう言うと、ユッキーは俺の頭をこつんとこづいた。


…いて。



「蒼ちゃんが子供すぎるの」

「…はい」

「ちょっとは落ち着いた?」


俺はユッキーを振り向いた。
ユッキーは手を止めて、俺を見た。


俺よりずっと小さな手。自分はまだ濡れたままの髪。
きゅっと結んだままの唇。



なんとも言えない感情がこみ上げてきて、どうしてだかユッキーを抱きしめたくなった。
もちろん、今度は抑えたけど。



「…ありがとう」