呆れるわたしを差し置いて、冬眞は返事すら待たずに意気揚々とキッチンへ向かった。


まさかとは思うけど、本当にご飯を作る気じゃないだろうな。

そしてそれを理由にここに居座る気じゃないだろうな。


「おい瑚春。もうちょっと冷蔵庫の中身充実させとけよ。女の子だろ」


本当に、まさかとは、思うけど。


「ちょっと冬眞! 何しようとしてんのあんた!」


声を張り上げれば、冷蔵庫を覗いていた冬眞は首を傾げてこちらを向いた。


「だからご飯作ってやるって言ってんだろ。あ、今だけじゃないからな、ちゃんと毎日作るから」

「いらないよそんなの! とりあえず今日はカップラーメンでも食って、明日には出て行け!」

「ひどいこと言うなよ。それに俺料理得意なんだ。どうせあんたろくなもん食ってないんだろうし」


冬眞が、くすりと笑う。


「だって瑚春は、料理が苦手だもんなあ」


独り言みたいに、そう呟いて。


だから、わたしは怒ろうとして、でも図星だから言い返せなくて。

だけど、そこで、ふと。

なんで、“図星を言い当てられた”んだろうと、妙な違和感に気付いて。