中学を出てから、高校はわたしも春霞も地元の公立高校に入学した。

学科は違うけど同じ学校だ。

家から自転車で10分ほどの距離にある学校で、志望の理由はまさに「家から一番近いから」の一点のみだった。


ふつうの勉強が大嫌いだからと服飾科に進み、日々のんびりだらだらとミシンばかりを踏んで過ごしたわたしと違い、普通科に進んだ春霞は、3年間熱心に部活に励んでいた。

春霞が所属していたのは、バスケ部と天文学部だ。

本当は天文学部だけをやりたかったらしいけど、わたしと同じく運動が得意だった春霞は入学早々バスケ部主将にストーカーまがいの勧誘を受け、兼部することを条件にバスケ部に入った。


「困ったもんだよね」


春霞はよくそう言っていたけれど、本当に困っているように言ったことは一度もない。

誰かに頼まれたら絶対に断らない奴だし、なんやかんやで上手くやってのけてしまう器用で頭の良い奴だったのだ。



そしてそういう奴は大概とても異性にモテる。

春霞は、わたしが姉としてそれはそれは自慢できるほどに人気者で、いつだって可愛い女の子たちに囲まれていた。

彼女のひとりやふたりやさんにんも、いつの間にかつくっていたっけ。


だけどあんまり女を見る目は無いようで、大抵「なぜこいつを」という女と付き合っていた記憶がある。


「ハルカ、なんであんな女と付き合ってんの」


何人分のそのセリフをわたしは吐いたことだろう。

そのたびに春霞はこう言い返す。


「コハルに言われたくないよ」


そう、わたしも大抵ろくでもない男と付き合っていたのだ。

性格はまったく似ていないのに、こういうところだけ双子っぽかったりした。