開けたままの窓からはさっきと同じ香りしかしなかった。

それがみょうに恨めしくて、わたしは力いっぱい窓を閉める。
 

机の上。

暗くなったモニタ。教科書、読み終えた本。カラフルな筆記具、ひらいたままのノート。

その先にある、半透明のペーパーカッター。
 

それに手を伸ばしそうになって、慌てて引っ込める。


「もう、なにもないんだ」
 
まるでひとごとのような台詞。

だからこそ、痛い。
 

欠陥品になる。それってどういうことなんだろう。

わたしは生まれたときから既にその烙印を押され、故に周りから奇異の目で見られてきた。

この学園に入学するにあたり、わたしはそれを隠せと大人たちに言われ、一般人として生活している。


でもそれってどういうことだろう。

わたしは一般人という枠組みに入れられて、どう感じたら良かったのだろう。
 

わたしだって辛い。わたしだって苦しい。

でも今、なにより痛いのはそんなことじゃないのかもしれない。
 

ナギ・ユズリハが欠陥品になることを望んだ。

つまり、彼はわたしみたいな存在をそういう目で見ている、ということだ。