ひとつ共感できるのは、いつだって子どもが感じることは一緒だということ。

どんな世界だって、どんな時代だって、子どもは苦しみ、葛藤し、やがて知識と経験を得て大人へと成長する。

それが今も昔も年齢すら変わらないのだから、人類というのは進化が難しいらしい。

 
ニュースを眺めていたモニタをはなれてひとつ伸びをする。

開けておいた窓から花の香りが微かに流れ込む。

キッカが育てる花。野生の、ほんとうの土の上で育った花に比べると薄い香り。
 

それでもないよりは断然いい。

その香りにつられて、わたしは庭へと行くべく部屋を出た。
 

静かな寮内。

ひとけのない大きな空間にはすでに慣れていた。

むしろちょっと心地良さすら感じる。

ひとりじめしている、という感覚ではない。

どちらかといえばその空間に溶け込めるような不思議な感覚。
 

階段を下り始めると、声が聞こえ始めた。

キッカとナギ・ユズリハだ。

何を喋っているかまではわからない。

けれど会話だということは判別できる。