後ろでまだ何かヤマギワが言っている。

もう耳に入れなくていい。

そう思いながら玄関の中に入る。


「わかってますよ」最後にキッカのそんな声が聞こえて、扉は閉じられた。

すごいな、素直にそう感じたと同時に息を吐く。


「さあ、このまま夕食にしよう」
 
キッカの声にナギ・ユズリハがこちらを振り返った。

真っ直ぐにわたしの目を見つめてくる。

その言葉のないきれいな顔に、わたしは負けてすこし俯いてしまう。

ヤマギワが言ったことは全部勝手な妄想だと言ってしまいたいのに、うまく言葉が出てこない。
 

逡巡している間に、ナギ・ユズリハは先に進んでいった。

しまった、と思う。

ただでさえヒノエのことで気まずい雰囲気があったのに、ヤマギワがそれに拍車をかけた。

わたしは何もフォローできていない。