どれぐらいそうしていただろう。

チーズケーキを口に押しこみ、氷で薄まったアイスティを流しこむ。

あまり長居はできないだろうとは思っていた。

夕食の時間に遅れてはならない。

誰かに見つかってもめんどうだ。
 

帰る、その提案をしようと思った瞬間、ポケットからコール音が鳴る。

びっくりして慌てて携帯端末を取り出すと、ヒノエからだった。
 

そっとナギ・ユズリハを伺うと「どうぞ」とジェスチャーで示される。

言葉よりも仕草のほうが豊かに思えたのは気のせいでありたい。


「はい」

『よ、謹慎中』
 
通話ボタンを押すと、液晶の向こうでヒノエが意地悪く笑った。


「いや、えっと……そうだけど。何?」

『何、とは失礼な奴だね。せっかく通話してやってるのに』
 
タイミングが悪い、出るんじゃなかったかも、と思いつつナギ・ユズリハにごめんなさいの仕草をおくる。

ところが、彼の眉が少し寄っていた。