席から見える庭は日本庭園を再現していた。
わたしにはわびさびの感覚はまだわからないけれど、こういうものを見ると落ちつくあたり日本人なのだろう。
正確には何人か知らないのだけど。精神的に。
ナギ・ユズリハと一緒にいたのは食事の席のみだったから、この状況だと少しリラックスすることができた。
いつもと違うのは、場を作ってくれるキッカがいないこと。
どうしたものかな、と逡巡するもアイスティがふたつ運ばれてきたタイミングで、彼が口を開いた。
「友人の絵を探しにきた」
置かれたチーズケーキにフォークはさせなかった。
それがひどくゆっくりとした声だったからだ。
「まだ描いてるんじゃないかって思って」
瞳はわたしを見ていない。
代わりに見つめられているアイスティの氷がからん、と音をたてる。
「やめて、しまった?」
わたしの問いにナギ・ユズリハが首をかしげる。
「どうだろう」そんな音が聞こえてくる。