長く暗い通路、もしくは水路。

大小さまざまなパイプ、ネズミにすえた匂い。
 

そんなものは一切合切存在せず、簡素な通路を抜ければすぐに反対側の扉が見えた。

そちらは鍵がかかっていないのか、ひねればすぐに扉が開く。
 

眩しい、外の世界。

アスファルト、鉄、人間の匂いが一気に鼻をつく。

午後の気温は蒸し暑く、されども高いビル群にほんものの空は追いやられていた。

その隙間にちらりと見えた本物の飛空挺。
 

外から見た学園ドームは、ただの灰色だ。

扉は一見してそれとわかりにくくなっている。

そもそもなんのためのものだろう、その疑問はあれど追求しないことにした。

あれこれ聞いては、ナギ・ユズリハが嫌がるかもしれないと思ったからだ。
 

なんにせよ久しぶりの外。

背伸びをすると道行くひとの視線がつきささる。

制服ではないからただの休暇中の学生だ。

それでもきっと他人がこちらを見るのは、わたしの横に無表情で立っている人間のせいだ。