なのにナギ・ユズリハはポケットから何かを取りだすとそれを扉に差しこんだ。

まさかの鍵穴。

彼がその鍵を持っていることも不思議だけれど、それよりもこの学園にとても似合わない旧式のロック。

むろんわたしの地元ではまだまだ使われているけれど、ここでそれを目にすることはないと思っていた。
 

ナギ・ユズリハは何食わぬ顔でその鍵をポケットに戻し、そっとドアノブに手をかけ向こう側へと進む。

足を一歩動かしてから、わたしを見る。

「来るのか、来ないのか」そんな表情で。
 

今日は謹慎の五日目。

あと少しで解放される。

外出禁止は頭の中にある。見つかったらきっと謹慎は延長されるだろう。
 

このまま彼を見送るという選択もあった。

もっともこれをキッカに報告するつもりはない。


この先彼が何をしに行くのかはわからない。

知らなければ、それが悪いことかどうかも判断できない。

だから報告なんて浅はかなこと、したくない。
 

それらを考えてもなお、わたしの足はその扉を目指した。