「散歩かなにか」
 
こちらが黙っていては無視のようになってしまう。

かといって先程昼食を食べたばかりなのにあらためて「こんにちは」もおかしい。

自然と疑問形になってしまった。
 

しかし彼はすこし考える素振りを見せてから、ゆるゆると首をふる。

散歩以外に外に出る理由があるのだろうか。


「学校に用事?」
 
その問いにもノーだった。

残るはグラウンドだが、今からスポーツをしに行くといった雰囲気でもない。

ラフではあったものの、運動には向いていない服を着ている。

ではあとなんだろう、そう考えた時点で彼は歩き出していた。

学園の外側に向かって。


「え、ちょっと」
 
そちらに何があると言うのだ。

驚いて声を出すと、振り返った彼が顔をしかめていた。
 
その表情に身体が硬直する。


「見つかったら、面倒」
 
初めて見る表情のナギ・ユズリハがそれだけ言った。

そしてまた木々の中を進んでゆく。

その先は、ドームの壁しかないはず。