「ちょっと待って」
何を考えたのか、手にはバタートースト。
焼き立てでまだ熱いそれを手袋のまま触ってしまって、申し訳ないと冷静に頭が判断する。
ナギ・ユズリハはわたしの声に驚いたのか、食堂を一歩出たところで振り返った。
太陽を模した光が、まぶしい。
「準備してもらってるんだからちゃんと食べなさいよ」
もうこうなってはなるようになれ、だ。
嫌われたって構わない。だってもともと好かれているわけでもないんだから。
だから、素直にぶつける。
食事を用意してもらって自己のわがままで食べないだなんて、失礼だとか悪いだとかの問題じゃない。
わたしは手にしたバタートーストを、何か言おうとしたらしいナギ・ユズリハの口に押し込んだ。
一拍、沈黙。
その後、キッカのくぐもった笑い声が聞こえてきた。