「ちょっと寝坊して、遅れちゃってね。三人一緒でもいいでしょう」
 
やられた。何故かそう思った。

あいかわらずキッカはにこにこと笑っていて、さも当然といわんばかりに食事をわたしが座っていたテーブルに並べ出す。

バタートースト、卵焼き、サラダにポタージュ。

どれもさして時間がかかるメニューだとは思えない。
 

そろそろとナギ・ユズリハに視線を戻す。

綺麗な顔は、崩れることなくテーブルを見ていた。


「じゃあ、いらない」
 
素直に座るんだろうか。それとも別のテーブルで食べるんだろうか。

わたしはそのどちらかだと思っていた。

だって目の前に用意してもらった朝食がある。
 

確かに、わたしとナギ・ユズリハは友人でもなんでもない。

同じテーブルに座るのを遠慮したいならば致し方がない。けれども、だ。
 

キッカは微笑みを崩さなかった。

「食べないと身体によくないよ」そうつけ加えるのみ。

それに応えることなくその場を立ち去ろうとするナギ・ユズリハ。

反射的に立ち上がるわたし。