来るんじゃなかった。再び強く思った。

それはヤマギワの顔を見たくなかったという理由から生まれたものではない。
 

見られたくなかった。

わたしは確かに欠陥品、この学園では一般人だ。

きれいで優秀な彼らとは違う。

だけど、見られたくなかった。聞かれたくなかった。
 

階段を駆けあがる。

乱れた呼吸もそのままに、部屋へと走る。

急いで鍵を開けて、自分の空間へと逃げ込む。

そこまでしか、気力は持たなかった。
 

扉を背にずるずると座りこむ。

キッカにすすめてもらった本が床へと落ちて音を立てる。

雨の匂いが、わたしを包む。
 

行くんじゃなかった。安易な気持ちでのぞくんじゃなかった。
 

何を言われても平気なつもりだったわたし。

どう評価しようが所詮他人だ。

だったら気に病むだけ無駄だと思っていた。
 

それでも。