考えてみればヤマギワは、以前読んだ小説に出てくる教師に似ている。
あれはもうだいぶ昔を舞台にしたもので、未だにふるめかしい権力をふりかざした、とか言われていた記憶がある。
その時代すでに古参だったのに今もなお変わらないとは。
人間はやはりたいした進化はしないらしい。
来るんじゃなかったな、と後悔していた。
ナギ・ユズリハに幻滅したとか声をかけられそうになかったからとかではない。
謹慎とはいえど長期休暇の期間にまで見たくない顔だった。
わざわざここに来るなんて、暇なのだろうか。
「早くも画家気取りでスランプってわけか。使えない奴だよ、まったく」
ため息を我慢して身体を反転させる。
だけどその言葉に身体が硬直した。
――あいつさ、絵描くの嫌いなのかもしれないなってたまに思うよ。
ヒノエの言葉がよみがえる。
あのときわたしはじゃあどうして、と言った。
嫌いならばあえて芸術学部に行かないだろうと。
だけど、それはわたしが何も知らないから言えたことだ。ナギ・ユズリハのことを。