息を殺して窓の中をそっと覗く。
こちらに背を向けたヤマギワと特にどこも見ていなさそうなナギ・ユズリハ。
「謹慎なんぞ俺のクラスから出すなんてな。まったく傍迷惑なんだよ」
わたしはこの男が嫌いだ。
指導という名のもとに何にでも口を出す目立つことをすればすぐに睨まれる。
睨まれたら厄介だからできる限り関わらない。
生徒から煙たがられているのに、それは自身の威厳のおかげだと信じてやまないタイプ。
「ちったぁ真面目にやれ。俺の身にもなってみろ」
いったい誰がお前の身を案じねばならないのだろう。
その白髪交じりの後頭部を睨んでいると、ちらっとナギ・ユズリハがこちらを見た気がした。
気のせいだったかもしれない。彼の顔はすぐに違う方向を見てしまった。
それにしてもヤマギワはうるさい。
他に寮生もいないからと扉を閉めずにいるのだろうが、キッカがここから離れた書庫にいる理由がわかった気がする。