「はい」と返事だけして、手持ちの本を元の場所へと戻しに行く。
学園の図書棟に比べればとても小さいの書庫。
他にたいした利用者もいないのか、本棚にあまり隙間はない。
それもそうだ、電子リーダーにデータをダウンロードすれば、重たい本をいくつも持ち歩く必要はない。
ここはそれでも紙に印刷された本というものを選択した人たちのための場所。
あらたに次の本を選ぼうとめぼしいタイトルのものを探しにゆく。
でも読みたいと思っていた本は既に読破してしまっていた。
ここに新しいものが追加されることはほぼないから。
「キッカさん」
棚の向こうに彼がいることを確認してから声をかける。
「なんだい」という柔らかい返事。
「何かおすすめの本ってありますか」
一拍、沈黙が訪れる。
「どんなのが読みたいのかな」
「ノンフィクション以外なら、なんでも読みます」
しかし今度はすぐに、笑い声が聞こえてきた。