それなのに海外からも。
国内ならわかる。国内初のジーンリッチ。
さすがに生まれてないから記録でしか知らないけれど、当時のニュースを見ればことあるごとに彼らは出てくる。
「僕の親、といっても遺伝子のね」
その言葉に思わず視線があがった。
キッカはほほ笑みを崩さない。
「外国のすごく有名なひとらしいんだ」
彼らはけしてその話題を出さない。
そもそも自分が誰の精子と卵子で生まれてきたかを知らないのだ。
世界中にある、いやシェアを牛耳っている精子卵子バンクは情報を公開しない。
ただ親の希望に沿い、選んで受精させる。
だからキッカだって知らないはず。
わたしだってもちろん知らない。
そして彼らがそれを口にしないのは、自分を選び育てた両親を親だと考え、かつ恥じないからだ。
自分は選ばれた優秀な人間。
それを幼少時から叩きこまれて生きている。
わたしの兄がそうだったように。