彼も昼食はまだだったらしい。

特別いやというわけでも、ひとりがいいわけでもなかったので、同じテーブルで食事を摂ることにした。

わたしの目の前にキッカが座る。
 

紅茶と同じ色の髪。クレソンと同じ色の瞳。

このひとは、真っ白な羊のようで、すこしだけわたし側にいる。

いやそれもわたしの願望でしかないのかもしれない。

そんな風に思えるぐらいには、わたしは彼に嫉妬している。
 

キッカは当初こそ知らないが、今では揶揄される存在だ。

現状の彼らとは違い過ぎる。

ただ、きれいに作られただけの人形。所有者――親の欲を満たしただけの器。
 

いいや、それはきっと今も変わらない。

ジーンリッチは親のエゴだ。

それをわかっているからこそ、彼らは自分の足元を確立させる。

自己を作りだす。
 

いいのは見た目だけ――そんな声をこのひとはどう感じながら聞いているのだろう。
 

だけどそう、うらやましい。

だって彼はそうなるべくして生まれたのだから。

やはり期待に応えられず生まれてきたわたしとは違う。