部屋に入り制服もそのままにベッドに腰かける。
かさり、とポケットの中身が音を立てた。
手袋を外してゆっくりとそれを抜き取ると、ほんのすこしだけミントの香りがただよう。
しわくちゃに丸められた紙を、破かないように丁寧に伸ばした。
厚みのある紙ではない。
無造作な折り目がすこしずつ、もとの形へと戻っていく。
手のひら二枚分の白い紙。
わたしはどんな感情を持つのが正解だったのだろう。
およそ利口なひとたちがすることではない。
いや、彼らだって人間なのだ。
その醜い部分ぐらい、わたしだって疾うの昔に知っている。
ひとつ深呼吸。
わたしはそれを角をあわせて折り畳み、机のひきだしへとしまった。
捨てる選択もあったが、それはしなかった。