「のっけから、ヘビーな話題」
「その方がいいこともあるだろ」
靴を履き替えて外に出る。
小さな箱から、ほんのすこしだけ広がる世界へ。
今日も世界は眩しい。あいかわらず、狭い空には飛空挺が泳いでいる。
今日はくちなしの香りもしない。
たぶん、ミントが世界をくつがえしてしまったんだ。
寮までの短い帰り道。
土ではない固い地面を踏みながら、わたしたちは休暇中の予定について会話を重ねた。
といっても特に何かイベントがあるわけではない。
わたしたちの実家はいまどき珍しいぐらいの田舎で、ヒノエは家の仕事があるし、わたしもきっとそれを手伝う。
あるとしたら小さな花火大会だけ。参加するのは地元の人間ぐらいの小さなお祭り。
「謹慎を長引かせるなよ」とのありがたい忠告にもうヘマはしませんと答える。
それに「どうだか」とため息をつかれたので、わたしはもう何も言わなかった。