そのうちのひとりが、掲示板に貼ってあった紙を見て笑う。

つられて周りが沸いた。集団とはそういうものだ。
 

その紙が、ふたりが描いたデッサンのあたりだったことは、気にしないでおく。

ひとの美的感覚はそれぞれだ。

でもきっと、そういう問題じゃない。
 

気にしないでおく。

そう思った時点で、わたしは既に気にしている。

 
瑠璃の羊。あの空には何があったのだろう。
 
初めて見たナギ・ユズリハの顔はきれいだった。
 
でも、それだけだった。

 

階段へと折れる手前、歩くタイミングをすこしずらしてわたしは廃棄ポストの中へと腕を突っ込んだ。

押し込んだわけではないだろう。

その予想が当たって、指先はあっさりと丸められた紙を見つける。
 

それを抜き取って、すぐさま制服のポケットに押し込んだ。

ほんのすこし罪悪感を感じつつも、心臓は大きく鼓動を打っていた。

知らないものを知るのは、どんなことだって楽しい。

やましさに同居する、好奇心。
 

皮の手袋が音を立てる。