「何が」その問いに「謹慎ってことが」と答えると今度はヒノエが肩をすくめた。

「美形ってだけで、そう思うのかねぇ」

「そういうわけじゃないけど」

「ま、実際、俺もよく喋るわけじゃないからわからないけど」

「ふたりしかいないのに」

「そう、ふたりしかいないのに」
 

会話はそこで途切れた。

そんなものか、と思って息を吸う。

もうミントの香りはどこにもなかった。
 

ただ階段へと折れる手前、ナギ・ユズリハは置かれた廃棄ポストの中に、さきほど握っていたであろう紙玉を捨てていたのをわたしは見ていた。

 
帰ろうか、そんな声がどちらからともなく聞こえてわたしたちは階段へと向かった。

その途中、なんとなく首を動かして後ろを見る。

ヒノエとナギ・ユズリハが通う教室から幾人かの生徒たちが出てきたところだった。