あいかわらずの厳しい目に、今度は肩をすくめてみる。
同時に教室内から笑い声が聞こえてきて、驚いてしまった。
唐突に湧いた、あまり気持ちのよくない声。
思わず教室の中に目を向けてしまう。
開け放たれた扉から見える、わたしの所属する部屋とさして変わりのない空間。
まだ残っていた幾人かの生徒。
数人ずつの塊がみっつほどあって、皆一様に携帯端末を眺めながら談笑している。
きっと一期の成績データだろう。
そのよくある風景の中、一番端、窓際の席に男子生徒はひとりで座っていた。
その手に携帯端末はない。
代わりに一枚の紙を握っている。
やがて彼はそれを丸めてしまうと、おもむろに立ちあがってこちらの方に向かってきた。
束ねもしない長い髪。
それが歩くタイミングにかすかに揺れて、身体のラインをふちどる。
緩められたネクタイの上に見える肌は白かった。
ゆったりとした歩みで、教室から出てくる。
ふわっと緑が香る。