ふと目が掲示板に言ってしまう。
校内のほとんどが電子式だというのに、この学舎だけはいまだに紙を掲示するタイプのものがある。
そこには彼ら芸術学部生の作品がいくつか飾られていた。
白い壁に、規則正しく並ぶ白い紙。
もっとも、わたしたちの学年に絵画専攻はふたりしかいない。
だからデッサンのようなものは二枚だけで、あとはデザイン画や写真ばかりだった。
「あれ、ヒノエの?」
彼の厳しい視線を感じつつも、とぼけて聞いてみる。
りんごらしき果実を持った女の人の絵。
腰にまかれた布のドレープが、とても柔らかそうに見えた。
その隣に、同じものを描いた絵がある。
しかしこちらはその後ろ姿で、ほんのすこし顔が見えるだけだ。
それでも編まれた髪は豊かで美しい。
「それと同じく謹慎組のユズリハ」
逸らそうとしても、ヒノエの前では悪あがきにしかならない。
十七年間、一緒にいても適応は難しい。